膝枕


春の暖かな日差しには大きく伸びをした。
膝の上には原型に戻ったリベザルがいる。時折彼女の膝の上で寝返りを打ったり、尻尾を揺らしたりして気持ちよさそうにお日さまに当たって眠っていた。
思わず微笑んでしまう、そんな柔らかな光景だった。

「ふふ。かわいいなぁ。」
「・・・・は?」

上機嫌のの呟きに、秋は顔をしかめた。

の感覚、ザギに似てきたか?」
「なにそれ。」
「イマドキな女子高生感覚。明らかにかわいくないものまでかわいいとしか表現できない。ボキャブラリーの量を疑う感覚だな。」
「ひどい!」

が頬を膨らまして抗議するも、迫力はイマイチらしい。秋は何事もなかったかのように彼女の隣に座った。

「秋はリベくんをかわいいなぁとか思ったりしないの?」
「僕はあいにく真っ当な好みだ。」
「そうじゃなくてさ。リベくんは秋から見たら弟分みたいなもんじゃない。」

は人差し指でリベザルの身体を優しくなでた。気持ちよさそうに寝言を呟くので、猫をあやすかのようにちょこちょこといじってやる。

「弟分ね。僕に言わせれば師匠を差し置いて、ってところだな。」

秋は憮然とした顔で、幸せそうなリベザルを人差し指で強くはじいた。可哀想にリベザルの身体はころりと転がって、の膝の高さの分だけ落ちてしまった。

「きゃっ!?」
「秋、ひどい!」

したたか打って泣きそうなリベザルを拾って、は秋を睨もうとしたが、それより早く膝に感覚が走った。

ごろん

「秋?どうしたの?」
「疲れた。」

一言呟くと、そのうち規則正しい寝息が聞こえ始めた。
明るい日差しに透けるような薄い色素の髪。そこからのぞく寝顔はが見とれてしまうほど端正でそれでいてかわいらしい。

「師匠、ひどいです!・・・・・・・お姉さん?」
「え!?」

突然声をかけられて、は危うくリベザルを落としかけた。きょとんとして見上げる顔に、は慌てて笑った。

「あ、うん。しょうがないヤツよねぇ、もう。」

ちらりと横目で伺うが、秋は頭上の会話には何の反応も示さず、全く起きる気配はない。

「リベくん、ごめんね。こうなると手のつけようがないよ。」

彼の寝覚めの悪さは天下一品ものであることは、この家の住人なら周知の事実である。
リベザルはうなづいた。

「俺、兄貴の手伝いしてきます。お姉さん、大丈夫ですか?」
「うん、平気。またひなたぼっこしようね。」
「はい!」

リベザルは元気よくうなづいて、の部屋をでていった。しばらくして遠くのほうから階段の下りる靴の音がして、それもやむとあたりは静かになった。

「ふぁ・・・・」

温かい日差しはの眠気も誘う。
彼女は欠伸を一つして、また膝の上の彼を見下ろした。柔らかく細い髪に指を通すと、指は引っかかりもなく髪の間をさらりと抜けてしまった。

(何から何までうらやましいヤツ。)

はベランダの窓枠に頭をあずけて目を閉じた―――――――――――



「人の気も知らないで、ずいぶん間が抜けてるな。」

狸寝入りから目覚めた秋は、頭上の彼女の寝顔を見上げる。
こちらは本気で昼寝状態のようだ。
を起こさないように起き上がって、秋は下向き加減のの顔を覗き込むように顔を近づけた。
肩から流れ落ちる髪をそっと耳にかけるが、よほど気持ちがいいのか起きる気配はない。秋は妖艶な笑みとともに、彼女のあらわになっている首筋に口づけした。

しばらくの空白の時間。

風が右からやってきては左へ流れる。
小さなイタズラをすると、彼はまた何事もなかったかのように寝心地のいい枕に頭を乗せた。

昼下がり。
青い空の下には二人の無邪気な寝顔・・・・・・・。

AFTERWORDS★★★
今回も秋夢です。
今年の春はせっかくの桜も花見を楽しむ前にたくさんの雨でかなりおじゃんになった地域が多いのではないかしら。
私の住んでる地域は今年はほんとに雨が多くて、恒例のお花見に大打撃をくらってる団体さんがいっぱいでした。
だから、時々こうやって暖かく晴れてる日はすがすがしくって気持ちよいですよねvv

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